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腕時計が止まった、動かない?よくあるトラブルの原因と対処法、修理費用について

腕時計が止まった、動かない?よくあるトラブルの原因と対処法、修理費用について

「大切な腕時計が突然止まってしまった…」「時間が遅れるようになった…」

そんなとき、焦ってしまう方は多いのではないでしょうか。精密機械である腕時計は、日々の使用や経年劣化によって様々なトラブルが発生します。しかし、その原因と対処法を知っておけば、慌てることなく冷静に対応できます。

この記事では、腕時計に起こりやすいよくあるトラブルを原因別に詳しく解説します。自分でできる簡単な対処法から、専門家への依頼が必要なケース、そして修理にかかる費用の相場まで、腕時計のトラブル解決に必要な情報を網羅的にご紹介します。

時計が止まる・時間が狂うトラブル

腕時計のトラブルで最も多いのが、「動かない」「時間が合わない」といった症状です。この原因は、時計の種類によって大きく異なります。

電池切れ【クォーツ式時計】

症状

腕時計が突然止まる、または秒針が数秒おきにしか動かない。

原因

クォーツ式時計は、電池の力で動いています。電池の寿命は通常、約2年~5年です。秒針が数秒おきに動く症状(2秒運針や4秒運針)は、電池の交換時期が近いことを知らせるサインです。

対処法
  • 自分でできること:ありません。自分で電池交換を試みると、内部を傷つけたり、防水性を損なうリスクがあります。
  • 専門家への依頼:時計店や家電量販店で電池交換を依頼しましょう。
費用相場
  • 一般店・家電量販店:1,000円~3,000円程度
  • メーカー正規サービス:3,000円~5,000円程度

磁気帯び【機械式時計】

症状

突然、時間が大きく進んだり、遅れたりする。

原因

機械式時計は、磁気に非常に弱い性質を持っています。スマートフォン、パソコン、スピーカーなど、日常生活には磁気を発するものが多く、知らず知らずのうちに時計が磁気帯びしてしまうことがあります。ムーブメント内部のヒゲゼンマイが磁気を帯びると、互いにくっつき合い、正常な動きができなくなります。

対処法
  • 自分でできること:磁気抜き器(脱磁器)を使えば、自分で磁気抜きを試すことも可能です。ただし、使い方を誤ると故障の原因になるため注意が必要です。
  • 専門家への依頼:時計修理の専門家は、専用の機器を使って短時間で安全に磁気抜きを行ってくれます。
費用相場
  • 一般店・修理業者:1,000円~3,000円程度
  • メーカー正規サービス:基本料金内で対応してくれることが多いです。
予防策

磁気を発する機器のそばに時計を長時間置かないようにしましょう。

潤滑油の劣化・油切れ【機械式時計】

症状

少しずつ時間が遅れる、または止まる頻度が増える。

原因

機械式時計の内部には、数百もの部品が使用されており、それらの部品がスムーズに動くように潤滑油が塗布されています。この潤滑油は時間の経過とともに劣化・乾燥し、油切れを起こします。すると、部品同士の摩擦が増え、動作不良や摩耗を引き起こします。

対処法
  • 自分でできること:ありません。
  • 専門家への依頼:これは時計のオーバーホール(分解清掃) が必要であることを示しています。
費用相場
  • 一般店・修理業者:2万円~5万円程度
  • メーカー正規サービス:5万円~15万円以上

衝撃や落下

症状

突然止まる、時間が大きく狂う。

原因

強い衝撃が加わると、内部の繊細な部品がずれたり、破損したりすることがあります。

対処法
  • 自分でできること:ありません。
  • 専門家への依頼:内部の部品に損傷がないか確認するため、専門家に見てもらう必要があります。
費用相場
  • オーバーホール料金に加えて、部品交換費用が加算されます。

腕時計の外部トラブル(見た目・操作)

ムーブメントだけでなく、外部の部品も様々なトラブルを引き起こします。

リューズが動かない・抜ける

症状

時間や日付の調整ができない、リューズを引いた際に完全に抜けてしまう。

原因

リューズの内部は、ムーブメントと連結されています。強い力が加わったり、経年劣化によって、内部の部品が破損することが原因です。また、リューズとケースの間のパッキンが劣化すると、リューズが固くなることもあります。

対処法
  • 自分でできること:ありません。無理に回したり、押し込んだりすると、さらに破損が広がるリスクがあります。
  • 専門家への依頼:内部の修理や部品交換が必要です。
費用相場
  • リューズ交換・修理:5,000円~1万5,000円程度。
  • 内部の部品にまで影響が及んでいる場合は、オーバーホールが必要となる場合があります。

風防(ガラス)の傷・ひび割れ

症状

風防(文字盤を覆うガラス)に傷やひび割れ、欠けがある。

原因

ぶつけたり、落としたりした際の衝撃です。風防の素材(プラスチック、ミネラルガラス、サファイアクリスタルなど)によって傷のつきやすさが異なります。

対処法
  • 自分でできること:ありません。
  • 専門家への依頼:傷は研磨で目立たなくできる場合がありますが、ひび割れや欠けは交換が必要です。
費用相場
  • 風防交換:5,000円~3万円程度(素材やブランドにより変動)

内部の曇り・水入り

症状

風防の内側が曇る、水滴がついている。

原因

衝撃や経年劣化で防水パッキンが劣化し、隙間から水分が浸入したことが原因です。リューズの締め忘れなどでも発生します。

対処法
  • 自分でできること:ありません。放置すると内部の機械が錆びて、修復不可能な状態になることがあります。
  • 専門家への依頼:すぐに修理店に持ち込むことが最重要です。内部の乾燥、部品の点検・交換、そしてオーバーホールが必要です。
費用相場
  • オーバーホール料金に加え、錆び取りや部品交換費用が加算されます。

ベルト・ブレスレットのトラブル

症状

革ベルトのひび割れ・破損、金属ブレスレットのコマが外れる・ピンが抜ける。

原因
  • 革ベルト:汗や水分による劣化、乾燥。
  • 金属ブレスレット:経年劣化によるピンやネジの緩み、破損。
対処法
  • 自分でできること:自分でバンド交換や簡単な調整ができる場合もありますが、専用工具が必要です。
  • 専門家への依頼:専門家は、時計のデザインや素材に合った適切なベルト交換や修理を行ってくれます。
費用相場
  • 革ベルト交換:3,000円~数万円(素材により変動)
  • ブレスレット修理・調整:2,000円~1万円程度

トラブルを未然に防ぐためのメンテナンス

腕時計の寿命を延ばすためには、日頃のケアが不可欠です。

  • 定期的なオーバーホール:機械式時計は3~5年ごと、クォーツ式時計は7年ごとの定期的なオーバーホールを推奨します。これは、時計の「人間ドック」であり、大きなトラブルを未然に防ぐための最も重要なメンテナンスです。
  • 磁気から遠ざける:スマートフォン、パソコン、スピーカーなど、磁気を発するものの近くに時計を長時間置かないように注意しましょう。
  • 強い衝撃を避ける:激しい運動時や、重いものを持ち運ぶ際は、時計を外しておくことを推奨します。
  • 防水性を過信しない:防水機能が付いていても、パッキンは経年劣化します。熱いお風呂やサウナは避け、水に濡れた後は柔らかい布で優しく拭き取りましょう。
  • 定期的なクリーニング:汗や皮脂、ホコリは時計の劣化を早めます。柔らかい布でこまめに拭き取ることで、清潔な状態を保ちます。

まとめ

腕時計のトラブルは様々ですが、その多くは適切な知識と対処で改善できます。

「止まる」「時間が狂う」といった症状は、オーバーホールや磁気抜きのサインかもしれません。

大切な時計を長く愛用するためにも、まずはご自身の時計の状態を把握し、必要であれば専門家に相談してみましょう。メーカーの正規サービスや、高い技術力を持つ民間の修理業者など、信頼できるパートナーを見つけることが、腕時計の寿命を延ばす鍵となります。

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